紅葉葵

ひとつ一つの花に、それぞれの思い出がある
十年くらい前、まだ身体に違和感もなく動き回っていた頃、バス停近くの家の玄関脇に真っ赤な花を見た。すくっと立ち上がった緑の中に、大輪の赤い花がとても印象的だった。
その翌年だっただろうか、市内在住の画家グループの展覧会で、日本画の艶やかな花の絵に目を奪われた。それが紅葉葵だった。
歩くことが出来ていた頃には、何度か目にしては心躍らせていたけれど、歩けなくなってからは、車の窓から探し求めたが、なかなか出会えるものでもない。

遠目に見ていたその憧れの花が、テーブルに飾られた。
ずうっと、描いてみたいと思っていたんだ。
記録的な猛暑の夏、紅葉葵をスケッチした。
紅葉葵の思い出に、この出会いも追加しよう。