満開の桜

silk-19402007-04-01

春になって退院したら、桜の花の下を歩きたい。それが私の夢だった。「歩く練習をするところはあるの?」街中は私のようなヨタヨタ歩きの人には目まぐるしすぎる。「桜並木の遊歩道があるわ。」桜色の道を歩くことを考えると、心が弾み楽しくなる。けれど足の痛みでそれは思うようにはならなかった。川沿いに長く続く桜並木は、毎年お花見散歩を楽しませてくれる。近隣の人気スポットなので日中は人が多く集まってくるが、朝のうちは人通りも少なく、ゆっくりと穏やかな春を満喫することができる。ヒヨドリは桜の花の蜜を吸い、セキレイが川岸を飛び交う。鯉の泳ぎ廻るその川面には鴨達も遊ぶ。風に吹かれて舞う花びらは、川の流れにのり、渦巻いて花びらだまりをつくっている。まぶたの奥に残るその道を歩きたい。そしてとうとう今年も家族に手助けされて、その思いが実現できた。リハビリの甲斐もあって、杖をつきながら満開の桜の花の下を一人で歩いた! 川をのぞき込み、桜の花の精気を胸いっぱいに取り込みながら歩く。「ああ桜の花ってほんとに素敵。」