リハビリが始まる

12月11日(月)
 私は期待でそわそわ、同室の仲間がベッドの上でのリハビリを始めたり、療法士さんが呼びに来て出かけるのを横目に見ながら落ち着かない。午前中は無しなのかと思い始めた頃、若いが経験深そうな男性が来た。自己紹介では作業療法を中心とした部門を担当すると云う。病状を聞かれ、握力だけを計られる。右20.5、左22、「では、明日からリハビリルームでリハビリを始めましょう」え?!手の作業?手先は程々に器用なはずだし、子供を3人育てた腕は太い。2キロのダンベルを持ってきても座ってなら一週間で使いこなす自信だってある。こんな私が一体何をするんだ。
 土日をのんびり待って過ごした後の、私の心は穏やかならぬ、これで入院費はいくらなんだ。
 そんなすさんだ思いも、初めてのリハビリルームでの理学療法士さんの治療で少し気が落ち着いてきた。
 彼女のマッサージ、エクササイズは足を蘇らせる。サークル歩行では、サークルにかじりついた姿勢を正され、踵から出してつま先で蹴ってと足の動きを注意される。足を意識すると、からだがコチコチになってくる。4〜50分の内容はとても充実している。

 12月12日(火)
 初めての車椅子入浴
 7年前、あるディケアサービスセンターで私はヘルパーとして週一回入浴介助をしたこともあったが、まさか自分がこんなに早い時期に、そうした入浴を利用するなど思いもよらなかった。背中だけ洗うのを手伝ってもらえば、他は自分で洗える。一人用の浴槽はお湯が出続けているので気持ちよい。パジャマの着脱も要領が分かっている分、気楽に入浴できた。
 今日の理学療法はサークルで3階の病室から1階へ移動。エレベーターに乗る時は注意が必要だ。足のマッサージから始まるいつものメイン体操。四本足の杖歩行。なかなかうまくいかない私に、療法士さんは思案顔。サークル歩行をナース見守りのフロアリハビリでする許可が出た。少しでもリハビリの時間が増えるのは嬉しいナ。
 私の症状に必要な作業療法とはどんなことをするのだろう。疑心暗鬼で受けた療法は、なかなか満足の行くものだった。
強度2のグリップ握りを左右20回 空気の入った不安定なクッション状のものに片足をのせ、左右の足のバランスをとりながら、両手首には500gの重りをつけ、60センチ程の立てられた竹の棒へ左右から順番に30個の洗濯バサミをはさみ付けていき、次に足を変え洗濯バサミを元に戻す。ゴムひもをウエストから膝下へ上げ下げする。これは、パンツの上げ下げの練習ですネ。 膝に手を乗せて椅子の立ち座り、あれまぁ、何とか立ったのだけれど座る時、ストンと腰が落ちてしまった。落ちついて、落ちついて──これが一番難しかった。
 最後は両手をとられての歩行練習。「オイチニサンシ アンヨハオジョズ コロブハオヘタ」

 12月13日(水)
 フロアでのサークル歩行開始。まぁこれは5分〜10分ですが、積み重ねて1週間のスパンで見れば上達していきます。
 リハビリルームでは先日の「アンヨハオジョズ」ウォークに引き続き、本日は「モンキー」ウォーク。腰に巻いたベルトを療法士さんが後ろで持ち、杖なしの歩行。「ハイ、手を振って!」オットット右手左手間違えそう。お尻が残り、これはもうお猿さんそっくり。
 椅子の立ち座りに「オー素晴らしい!」やる気にしますネ、お兄さん。ますますベットサイドでの自主トレに身がはいります。

 12月14日(木)
 しっかり自主トレしたせいか、本日は筋肉痛、それが療法士さんのマッサージをはじめとしたメイン体操でとてもすっきりしたのには驚きです。本日は左手で杖、右腕は組んでの仲良しウォーク。
 作業療法室では担当の療法士さんがお休みで、代わりに若いお姉さん。基本リハビリをいつもの2倍。ウッソー!「いや、連絡メモに書いてあるんです。」コンチキショー、されど、すべて我が身のため、我が身のため。