「アンタはよくそんなに明るい顔をしていられるね」

初めてデイに参加した日、となりに座った女性は私と同じ年でした。病気知らずで生活していたのに、なんの前兆もなく、5年前脳梗塞で倒れ、3年間入院した。半身麻痺の他、腎臓障害、糖尿病も出て、現在は食前にインシュリンを打ち、週3回透析に通っている。リハビリで腕も挙げられるようになり、指関節の拘縮はだいぶ緩和されている。1年ほど前から、足の先へ神経が伝わるようになって、足裏で床を感じ取れるようになった。けれど、立ち上がりには、まだ力が入らないと嘆く。移動は電動車椅子。街に買い物にも出かけると云う。本を読んだり、手作業はしていない。そんな彼女の話を聞くのも、見ている事も辛い。
「どうして、こうなっちゃったんだろう」「お互い、泣きたくなっちゃうね。まだいっぱい、やりたいことがあったもの」「一人になると、生き続けるのが嫌になるよ」
同調ばかりしてはいられない。
「リハビリでここまで良くなったんでしょう。凄いじゃあない。まだまだ、可能性があるのだもの。私なんて夢も希望もない。上手く行って現状維持。進行していくって保証されてるの」「アンタも大変だねぇ」「こうなっちゃたんだから、もう諦めるしかない」「諦めがつかないよ」
そうだよね。明るい顔をして、背筋を伸ばして,ツッパている私だって,心の底に押し込んでいる思いがある。
その日の夜 寝るばかりの時
「もういいよ」心の中で囁く声がする
明日も 明日も 又その次の日も 続いていく日々 
「もう疲れたよ」ぶつぶつと本音が湧きあがる
やる事 やったでしょう? 休みたいよ
すると「ちょっと待って!」もう一人の私が 声をかける
「まだ どこかで 貴方の命が 必要とされている」
どうしようもない現実を、納得させようと詭弁を弄するもう一人の私が、今は強いようです。めげる私を支えて、励ましてくれる『私』に乾杯!
あ〜あ、今日も又、本音は横に置いて、生きていくんだ。