季節を感じる時

机の上に届けられた秋色の落ち葉は、もう色があせてきています。
ディ送迎車の窓から眺めた銀杏の木も、ひと時の輝きを失いました。
私は今年、秋を充分に堪能する事が出来ました。
自由に歩き回れた頃、季節を訪ね歩く事が好きでした。
動きを規制された時、楽しみを取り上げられて、
好きな旅番組のテレビを観るのも空しく、ただ唇をかむ思いでした。
けれど、空っぽになった心に、新しい目が生まれました。
小さな公園の片隅にも、いつも通り抜ける横丁沿いの民家の庭にも、
移り往く季節を、見つける事が出来ました。
足下には沢山の秋がありました。
自然の織りなす色合いの妙は、私の心を揺るがせます。
見渡す限りの秋景色でなくても、あちこちの小さな秋の色どりに、
改めて、感動する喜びを味わいました。
そこにある命、華やかに燃え尽きて散った、抱えきれないほどの葉。
葉を落とし、寒さに身を固めた樹々は今、体内に新しい芽を育む。
既に、ロウバイは蕾を持ち、開花する時を伺っている。
枯れたような梅林の枝々も、堅い蕾を覗かせているかもしれない。
身の回りに事もなく、心穏やかな日々、静かに時が過ぎて往く。