症状9

昨年の5月に、病気の宣告を受けた時、「この病気は難病で、現在ではまだ治療法は分かっていません。症状はゆっくり進行しますから、年齢を考えれば、転んで骨折して寝たきりにならないよう、注意して生活をすれば、平均寿命も全う出来ます」と云われた。
それからの6ヶ月間、進行はゆっくりどころか、目に見える様に進んでいった。脊椎狭窄症の手術後に受けた3ヶ月間のリハビリを思い出しながら、自宅で毎日一時間はストレッチ等していたのだけれど、歩行はだんだん困難になり、立ち続ける事が出来なくなる。
9月からは週一回、デイサービスでのリハビリが始まり、10月からは週二回に増やした。家でのリハビリは、ハーモニカや音読がメインになり、ストレッチは朝晩のベットの上での軽いものだけになった。
デイに通い始めて3ヶ月、本格的なリハビリの成果が出てきたのだろうか、症状の進行がここ2ヶ月位、緩やかになって来ている気がする。心なしか、身体の強ばりも少ない。
それとも、歩く事を忘れしまい、歩きたいと云う願望が、勢いを失ってしまって、座ったままの日常を、諦めきって受け入れているのか。実現不可能な欲望を抱え込んでいれば、心の中では、出来ない事への不満が渦を巻く。解決できないそんな気持ちは捨てるんだ。
身体の状態や、心の状態が絡み合いながら、体調をつくる。
記憶の中に残る自分を、未練がましく見つめていたって、生きる事が辛いだけ。過ぎ去った日々は、忘れてしまった方が、心穏やかにいられるようだ。穏やかな心は、身体にも波及していく。


唯一出来ていた夕食の支度も、メインは娘に移行した。
声が低くなっているのは、歳のせいか病気のせいか。時たま、舌の動きも重い。