街路樹

葉を落とした街路樹のゴツゴツとした枝先に、いつの間にか細い枝が垂れ下がり、小さな芽をつけ始めていた。そうだ、この辺りは柳の木の並木道だったのだ。
市内の地図を見ていると、ケヤキ通り、サクラ通り、イチョウ通りと名付けられている道がある。あちらこちらと走り回っていると、様々な街路樹の植えられた道を通っていく。冬模様の街路樹は、樹肌で自己主張をしているが、その木の名前を見極める事は、なかなか難しい。
外の気配を楽しみたいと、送迎ドライブを歓迎してはいるものの、流れ過ぎていく街並を、ただ漫然と眺めているだけでは、たびたび通る道ともなれば飽きてもくる。けれど車の窓から見える狭い世界でも、少しずつ探って行けば、限りなく広がっていくのかもしれない。
桜、銀杏、欅は、裸の木であろうとも、その樹皮や枝振りで判断する事が出来る。けれど気になる幾つかの木肌を確かめる為に、樹木の本を図書館から借りてきてもらった。あの本、この本と、三度目の正直でやっと調べやすい本をみつけた。
はっきりとした斑模様の木肌を見せているのは、モミジバスズカケの木。又、まったく木肌の違うアメリカスズカケの木も、見かけた気がする。秋に色鮮やかな紅葉を見せてくれたトウカエデの樹皮は、細長い薄片になってはがれるとの説明があるが、それは襤褸を纏ったような風情の樹で、もう忘れる事もあるまい。これからは、気になる木に出会ったら、眼の裏の映像と図鑑を照らし合わせ調べる仕事ができた。
今、街の中は、梅の花びらが舞い、先週から目につき始めた白モクレンが空を明るくしている。昨日今日の寒さに、開花を待つ桜の花芽たちは身を震わせて喜んでいるのだろう。