桜吹雪の花の下で

あれよあれよと言う間に、咲きほころび始めた桜の花が、何時散ってしまうのかとヤキモキしていたけれど、5日には絶好のコンディションでお花見をすることが出来ました。
友人が早朝から場所取りをしてくれた所は、桜祭りで賑わう会場から離れた、湖を見下ろす高台にある大きな桜の木の下。テーブルには持ち寄った手作りのお弁当。
最初のご挨拶は、ちょっぴり涙ぐみそうになったけれど、1年と1ヶ月ぶりに会ったのに、いつもと同じ、昨日の続きのように話が弾みます。
もう25年も前の頃、夏はキャンプに子供たちを連れて行ったり、冬はスキーにと出かけていたのが、いつの間にか親たちだけが残ってしまった。それでも毎年、野で山で楽しんでいたが、ここ2年、私は参加することが出来なかった。けれど、皆でつくった思い出は脳裏から消え去ることはない。雪解けの傍らの鮮やかなフキノトウカタクリのお花畑、ベニテングダケのフェアリーサークル、雨上がりの林の中に光るハナイグチ、ヤマブドウの蔓にぶら下がって、子供のように大笑いした日々。採集した山菜を天ぷらにしたり、たき火を囲んでキノコ汁を食べたりと、共に過ごした時間は私の心の中にずっしりと存在し続ける。
それぞれが忙しい生活を持ちながらも、楽しみを分かち合ってきた仲間たちなのに、私は病気になった当初、もう一緒に楽しむことが出来ないのだから、彼等からも身を引いて、自分の周りを整理しようと、狭い世界に潜り込む道を選択をした。
それから1年、どこかで、声も立てずに、そっと私を気遣ってくれている気配がする。『逢いたいな』私の周りを心の声が飛び交う。車椅子で動けるようになったのだから、お花見なら一緒に出来るよね。そして、見失ってしまっていたものが、再び私の元に戻ってきた。
お昼を過ぎると、時を終えた桜の花びらは、絶え間なくひらひらと落ち始めた。今年の桜は終わっても、車椅子で又、次のものを見つけに行こう。