息切れ

一見 元気の頑張り屋。「出来る?」「やります」
平行棒を使って、膝を高く上げた歩行練習も三往復目ともなると、会話をする余裕もない。指導された通り正確にと、必死に身体を動かすと、席に戻った時には息も上がり汗がどっと噴き出す。
そんな私を見て、デイの職員は言った。
「リハビリは、頑張りすぎても良くないよ。無理はしないで、量を少し減らそう」
『やるんだ!』と決めると、ついつい遮二無二突き進む人の、息切れは一つのバロメーターになるようだ。一休みして落ち着いてきても、それを繰り返していると疲れが蓄積してくる。家に帰れば、緊張感から解放されて、脱力の快感に浸り込む。気がつくと気力は削がれ、集中力は消え失せていた。
座椅子に座り込み、ぼうっとテレビを見ながらうたた寝をしてしまう。言葉を操る事も出来ず、物語りのストーリーを追い続ける事にも疲れる。けれど文字を失いたくないと、慌てて手元の詩集をひもとく。
さあさあ、ちょっと歩みを緩めたっていいじゃない。十年後には治療法が見つかっているかもしれないのだ。それまで生き長らえる為には、今から息切れなどしていられない。