街路樹の花

この春は桜の花のトンネルの下を何度もドライブをしたし、白や、うす紅色のハナミズキの並木道を心躍らせながら通り過ぎもした。今はもう、その通りは鮮やかな新緑で覆われている。
久しぶりに通った道の街路樹を見上げた時、赤い花の房が天空に向かって咲いているのを見つけた。これはゴールデンウィークに公園で遊んだ時、初めて見覚えたベニバナトチノキに違いない。通り過ぎて行く樹の、大きな葉を掌状につけている様を見て、トチノキであることを確認した。そして又、白い花をつけた樹を一本見つけた。
どう言う訳か、今まで私のトチノキのイメージは、山奥の森の中で雄々しく枝を拡げている姿であり、街中の狭い空間には、はめ込み切れない気がしていた。けれど調べてみると、ベニバナトチノキマロニエアカバトチノキの交配種で、街路樹にも使われているらしい。そうかマロニエねぇ。見た事のないパリの町、セーヌの流れ、マロニエの並木道、シャンソンの歌声の中から流れ聞いた言葉が、頭の中を通り過ぎて行く。すると途端に、新しく気付いたトチノキ通りの緑の葉が身近になった。そうだ、暑い季節にあの通り道は、深い緑の涼しげな影を落としていた。街路樹の名前を覚えた通りは、まるで知り合いと出会える道のようで、これからのドライブが楽しみになった。
6月にはニセアカシアの街路樹が、白い花塊を見せてくれるのだろう。
今はまた、坂の上の林、公園の木々の一本一本が、緑の色合いを微妙に変えて、目を楽しませてくれている。