症状13

昨年の五月に初めて神経内科の受診をして、病名を告げられてから一年経った。
SCDの症状は、腰部脊柱管狭窄の陰に隠れ潜んでいたようで、手術で脊柱管の神経の通りを良くしても、歩行困難は続いており、整形外科から神経内科に原因追求を移行すると、あっけなくその正体は姿を現した。
病気の進行は緩徐とは言え、この一年数ヶ月の変化は大きい。ちゃんと歩けるようになるんだと、リハビリ病院から帰ってきたのだけれど、その頃僅かに出来た一人歩きも、今はほとんど出来ない。何とか一人で立ち上がる事は出来て、物に掴まれば多少は立ってもいられる。去年の7月に行ったバランスの検査では、物に掴まることもなく何とか一分間立ち続けたが、今では踵を合わせて立ち続けていられないだろう。立ち上がり、歩行は目に見えて退化し、私の行動を妨害している。それでもリハビリの効果か、不自由な身体に慣れてきたせいか、動きが軽く感じることもある。
手の働きには気になる変化はない、握る力、細かな作業には今のところ影響はないようだ。
「会話は問題ない」と医師は言う。「私自身は舌がもつれるような気がしている」「もつれていても、大きな声で、ゆっくり話しているから聞きづらくはない」
とは言え、身体を動かした後の、心拍数の上がった状況で話そうとすると、舌が硬直したように動きは鈍くなる。
現在は目の前の揺れを感じる事はないが、軽い目眩のような感覚はよくある。
今日、具合が良くても、明日はどう調子が変わるか分からない。窓越しの青空に心が浮き立っても、どんよりとした低気圧の下で押しつぶされそうに思うのは、気のせいだろうか。