ヒールシューズ

二年前、片腕を借りて杖をつき数十メートルを歩く事が出来た。
一年前には、それは数メートルになった。
今では、歩行時に杖を使う事は無い。介助者の両腕を借りて辛うじて数メートルを歩く。


立ち上がる時に体重は踵にかかり、つま先がそり上がる。身体の重心の位置を捕まえることが出来なくてバランスが取れないのか。バランス感覚が欠落して重心を失っているのか。その不安定な状態に身体は前屈みになり、腕を借りる介助者に体重を重く預けてしまう。これは介助する方に大きな負担になる。
「重心が前の方にのるように、靴の踵を少し高くしてみたらどうだろうか」デイのスタッフの助言でスニーカーの中に3センチのシークレットヒールを入れてみた。
一人で立ち上がれない事には変わりないが、介助されながら歩く時、ペタンコの靴底より踵の高い方が、腰を真っ直ぐと伸ばしやすい。腰が伸びると介助者への体重の掛け方が軽くなるようだ。


3センチものシークレットヒールを入れると、踵のカバーが浅くなり靴がぬげやすくなる。手持ちのスニーカーの一足だけが何とか対応出来たけれど、そろそろ新しい靴も欲しい。どんな靴が良いかしら。探していたら踵の高いスニーカーが見つかった。けれど足長効果を狙ったおしゃれ靴で、ヒールが細く5センチもの高さでは、歩行困難者にはそぐわない。
なにしろリハビリがメインな生活なのだから動き易い、履き脱ぎが簡単な靴が欲しい。何度か見て回る中でやっと妥協出来る靴を見つけた。ヒールが3センチのウォーキングシューズで安定感がある。
まずはこの靴を履き慣らしてみよう。