二人のお母さん

私たちの部屋に一泊だけして他の部屋に移って行ったお母さんが二人いた。一人のお母さんはどうして歩けないのか分からずじまい。なぜって彼女は日中ずうっと寝ていたから。9時の消灯後は、私も当直の職員が何度も来ていたのはおぼろげに気づいていた。「◯◯さん、パジャマを脱いでは駄目よ。」翌日彼女はナースステーションの近くの部屋に移され、日中はステーション前のテーブルに席が作られていた。後日彼女のパジャマはツナギになっていた。
もう一人のお母さんは80歳前半、庭で転んで足を痛めたという。息子さんとの二人暮らしで、彼が帰ってくるまで転んだ状態で待っていたようだ。「子供がホテルでゆっくりしてこいって言うもんだから・・・」彼女にとってここはホテルだった。夜中、彼女は眠れないようで、隣りとの間のカーテンを何度も開ける。隣りのベットのミセスはその都度「なあに?なんか用?」と聞いたか返事は特にない。「アタシャ寝不足だよ。」翌日彼女もナースステーション近くの部屋に移って行った。